エギングにおいて、アオリイカがエギを抱く瞬間のほとんどは「フォール中」に集中します。シャクリでイカの興味を引き、フォールで食わせる。この一連の流れこそがエギングの醍醐味ですが、多くの初心者が「フォールの使い分け」という壁にぶつかります。
「フリーフォールとテンションフォール、結局どちらが釣れるのか?」
「状況に合わせてどう使い分ければいいのか?」
こうした疑問を抱えたまま釣りを続けても、偶然の1杯には出会えても、安定して釣果を伸ばすことは困難です。フォールを制する者はエギングを制します。2つのフォールの特性を正しく理解し、現場の状況に合わせて選択できるようになれば、これまで逃していた微かなアタリを確実に捉えられるようになります。
この記事では、フリーフォールとテンションフォールの基礎知識から、プロも実践するシチュエーション別の使い分け術までを徹底的に解説します。読み終える頃には、自信を持ってフォールを選択し、今よりも確実にヒット率を高めるスキルが身についているはずです。
【基礎知識】エギングにおける2つのフォール法とその特徴

エギングの戦略を組み立てる上で、まずは「フリーフォール」と「テンションフォール」がそれぞれどのような役割を持つのかを整理しましょう。これらは単なる沈め方の違いではなく、エギの「動き」と「感度」をコントロールするための重要な手段となります。
フリーフォールとは?(特徴とメリット・デメリット)
フリーフォールとは、シャクリを入れた後にリールのベールを返すか、ラインを指で送るなどして、ラインを完全に緩めた状態でエギを沈める方法です。
この方法の最大のメリットは、エギを「自然に、かつ素早く」沈められる点にあります。ラインの抵抗がほとんどかからないため、エギは設計通りの角度で垂直に近い形で落下します。これにより、深場(ディープエリア)であっても短時間で着底させることが可能です。また、余計なテンションが一切かからないため、警戒心の強いイカに対しても違和感を与えにくいという特徴があります。
一方で、デメリットは「情報が得にくい」ことです。ラインが緩んでいるため、イカがエギを抱いた際のアタリが手元に伝わりません。ラインの動きを目視で追う必要があり、風が強い日や夜間の釣りでは難易度が格段に上がります。また、潮の流れにラインが流されやすく、意図しない場所までエギが運ばれてしまうリスクも抱えています。
テンションフォール(カーブフォール)とは?
テンションフォール(別名:カーブフォール)とは、シャクリの後にラインを張った状態を維持し、エギを自分の方へ引き寄せるように斜めに沈める方法です。
この方法の最大の利点は「アタリの取りやすさ」に集約されます。ラインが常に張っているため、イカがエギに触れた瞬間の違和感や、抱いて引っ張る感触がダイレクトに手元や竿先に伝わります。初心者であっても「今、当たった!」と確信を持ちやすく、即座に合わせを入れられるのが強みです。また、ラインテンションをかけることでエギの沈下速度を意図的に抑えられるため、浅場(シャローエリア)でじっくり見せたい場合にも有効です。
反面、デメリットとしては、エギが常に釣り人側へ寄ってしまうことが挙げられます。狙ったポイントから早く離れてしまうほか、沈下角度が水平に近い不自然な形になりやすく、活性の低いイカには見切られる原因になることもあります。また、水深がある場所では着底までに時間がかかりすぎ、手返しが悪くなる点にも注意が必要です。
【徹底比較】フリーフォールとテンションフォールの違い

「結局、自分にとってどっちが有利なの?」という疑問を解消するために、まずは2つのフォールの性能差を一覧表にまとめました。自分のフィールドやスタイルに当てはめて比較してみてください。
| 比較項目 | フリーフォール | テンションフォール |
|---|---|---|
| 沈下速度 | 速い 垂直にストンと落ちる |
緩やか ラインがブレーキになる |
| 沈下角度 | 垂直に近い (70〜90°) |
自分寄りの斜め (30〜45°) |
| アタリの感度 | 低め (ラインの動きを見る) |
非常に高い (手元に直接伝わる) |
| スレにくさ | 最高級 (不自然な抵抗がない) |
普通 (見切られる事がある) |
| 得意な状況 | 深場・高活性 足元をタイトに攻める |
浅場・渋い状況 夜間・風が強い日 |
エギングにおいて、フリーフォールとテンションフォールを使い分ける本当の理由は、エギの「沈下姿勢」と「到達速度」をコントロールすることにあります。この2つの要素が変わるだけで、イカの反応は劇的に変化します。
まず、沈下速度の面で比較すると、フリーフォールの方が圧倒的に速いのが特徴です。ラインに引っ張られる抵抗がないため、重力に従ってストンと落ちます。
一方、テンションフォールはラインがエギを引っ張るブレーキの役割を果たすため、沈下速度は必然的に緩やかになります。
次に沈下角度です。
フリーフォールは垂直に近い急な角度で落ちるため、ピンポイントの深場を攻めるのに適しています。
対してテンションフォールは、釣り人側へ寄りながら斜めに落ちる「カーブフォール」となります。これにより、イカに対してエギの側面を長い時間見せることが可能になります。
感度の面では、常にラインが張っているテンションフォールが優位です。
しかし、フリーフォールには「ラインの緩み」という視覚的な情報があり、これを読み解くことでテンションフォールでは出ないアタリを察知できます。
このように、両者は対極の性質を持っており、どちらが優れているかではなく「どちらがその瞬間の海に適しているか」という視点が重要です。
【実践】釣果を伸ばすフォールの「使い分け」シチュエーション

状況に応じたフォールの使い分けは、釣果を左右する最も重要な判断です。現場の状況を分析し、以下の基準で最適なフォールを選択してください。
フリーフォールを優先すべき状況
まず、水深のあるディープエリアを攻める際はフリーフォールが必須となります。テンションをかけるとエギが浮き上がり、なかなか底に到達しません。素早く着底させて手返しを良くするためには、ラインを十分に送り出すフリーフォールが最も効率的です。
また、アオリイカの活性が高いマズメ時や、新子の時期などもフリーフォールが効果を発揮します。高活性なイカは、キビキビとした速い動きに強く反応するため、垂直に近い鋭いフォールはイカの捕食本能を刺激し、迷わず抱かせることが可能です。さらに、堤防の壁際や沈み根のすぐ隣など、タイトに攻めたい場面でも、エギが手前に寄らないフリーフォールが最適といえます。
テンションフォールを優先すべき状況
一方で、強風時や潮の流れが速い状況では、基本的にはテンションフォールを選択してください。ラインを緩めると風や潮にラインが流され、エギの現在地や挙動が把握できなくなるからです。ラインを張ることで「エギの位置」と「操作感」を確保し、トラブルを未然に防ぐことができます。(※ただし強い横風でラインが孕んでしまう場合や、潮流の向き等によっては、フリーフォールの方が操作感が高い場合もあります。状況に応じた柔軟な判断出来るのがベストです。)
次に、夜エギング(ナイトゲーム)や、アタリが極端に小さい渋い状況でもテンションフォールが強力な武器になります。視覚情報が限られる暗闇では、手元に伝わる感触だけが頼りです。テンションをかけておけば、イカが触れた際の「違和感」をダイレクトに感じ取れます。
さらに、シャローエリア(浅場)を攻める際も、あえてテンションをかけて沈下速度を殺すことで、イカにエギをじっくり見せる「食わせの間」を長く作ることができます。環境の厳しさやイカの活性の低さをカバーするのがテンションフォールの役割です。
脱・初心者!フォール中の「アタリ」を見極めるコツ

フォールの種類によって、アタリの出方は全く異なります。それぞれの特徴を掴むことで、フッキングの成功率は格段に上がります。
フリーフォールでのアタリの取り方
フリーフォール中は手元に感触が来ないため、「ラインの動き」に全神経を集中させることが鉄則です。
最も分かりやすいアタリは、沈んでいるはずのラインが急に「ピンッ」と張ったり、逆に「フワッ」と不自然に止まったりする動きです。エギが着底していないタイミングでラインが止まれば、それはイカがエギを抱いて浮き上がったか、その場で抱きとめたサインとなります。少しでも違和感があれば、即座に合わせを入れる癖をつけましょう。
テンションフォールでのアタリの取り方
テンションフォールでは、ロッドティップ(竿先)と手元の感触に注目します。
イカがエギを力強く引ったくれば「グンッ」と明確な重みが乗りますが、熟練者が狙うのはもっと繊細な変化です。沈んでいた穂先がわずかに戻ったり、張っていたラインの重みが「フッ」と消えたりするような違和感を逃さないでください。これはイカがエギを抱いて手前に走った際に出るアタリです。テンションフォールは常にラインが繋がっているため、こうした小さな信号を確実に捉えることができます。
実用的なテクニックとして、「ロッドを持っていない方の手の指で、リールから出ているラインに軽く触れておく」というのも有効です。ラインの変化が直接指に伝わるので、アタリを逃しにくくなります。
テンションフォールを昇華した上層・中層の「ステイ」
テンションフォールでアタリがばっちり取れる様になったら、上層や中層での「ステイ」も試してみましょう。通常の様にロッドティップを可能な限り下げてフォールするのではなく、「ロッドを立てて上方向のベクトルをエギに与えながらレンジをキープする」という方法です。
特に春の藻場等では、生い茂った藻の直上を少しでも攻めたくなるので有効です。(当サイトでは「春の藻場攻略ガイド(<リンク設置>)」も公開していますので、是非合わせてどうぞ。)

このイカは、まさに藻場で藻の直上を攻めた結果手にした2.68kgのデカ雄です。
勿論、物理法則的にきっちりその場で完全にステイするというのは不可能です。ですが、攻略したいピンスポットを少しでも長く攻めることは、特にナイーブな春のイカを攻略する為には重要なテクニックとなります。
最初はなかなか難しいかもしれません。まずはレンジキープをしやすい「スーパーシャロータイプ」のエギで練習してみるといいかもしれませんね!
個人的には、軽めのスーパーシャローでもフォール姿勢を崩さない「エギ王K」が最もオススメです。
応用編:フリーとテンションを組み合わせた「ハイブリッド戦略」

一つのキャストの中で、フリーとテンションを交互に使い分ける「ハイブリッド戦略」を覚えると、釣りの幅がさらに広がります。
最も効果的なのは「着底まではフリー、誘い後はテンション」という組み合わせです。まずはフリーフォールで一気にボトム(底)を取り、手返しをアップさせます。その後、シャクリでイカを寄せた後は、テンションフォールに切り替えて確実に食わせのアタリを取る、という流れが非常に合理的です。
また、イカの追いが悪い時は、フリーフォールで急降下させて反射的に追わせた直後、一瞬だけテンションをかけてエギを水平に見せるテクニックも有効です。動きの「静」と「動」のギャップをフォールだけで演出することで、見切られやすい状況を打破できます。常にどちらか一方に固執せず、一つの流れの中で変化をつけることが、竿頭への近道となります。
エギングのフォールに関するよくある質問(Q&A)
Q:初心者はどちらのフォールから練習すべきですか?
A:まずは「テンションフォール」から覚えることをおすすめします。最大の理由はアタリが分かりやすく、エギングの楽しさを実感しやすいからです。また、常にラインを張ることで根がかりを回避しやすくなるという実戦的なメリットもあります。
Q:エギの種類によってフォール姿勢は変わりますか?
A:はい、大きく変わります。特にタングステン搭載モデルやシンカーの重いエギは、フリーフォールでの沈下速度が非常に速くなります。逆にシャロータイプのエギは、テンションフォールをかけると沈下速度が極端に遅くなるため、エギの特性に合わせてテンションの強弱を調整する必要があります。
Q:爆風でラインが煽られる時はどうすればいいですか?
A:ロッドティップを水面に近づけ、可能な限りラインを海面につける「ラインメンディング」を行いつつ、強めのテンションフォールを維持してください。フリーフォールはこの状況では通用しません。感度が鈍る場合は、少し重めのシンカーを追加して沈下を安定させるのも一つの手です。
まとめ|状況に合わせたフォール選択が「脱・ボウズ」への近道

エギングにおけるフォールは、単にエギを沈めるだけの作業ではありません。フリーフォールとテンションフォール、それぞれの特性を理解し、現場の状況(水深、風、活性)に合わせて選択することこそが、釣果を最大化させる秘訣です。
- 素早く沈め、自然に誘うなら「フリーフォール」
- 確実にアタリを取り、トラブルを防ぐなら「テンションフォール」
この基本を軸に、まずは現場で両方の感覚を試してみてください。自分の操作でエギの動きを変え、狙い通りにイカを抱かせた時の喜びは格別です。本記事で紹介した使い分け術を実践すれば、あなたのエギングはより論理的で、精度の高いものへと進化するはずです。
次回の釣行では、ぜひ「なぜ今のフォールを選んだのか」を自分自身に問いかけながら、価値ある一杯を手にしてください。
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